月刊ニヒリスト

ニヒリストが日々あったことを綴るブログです。

中古レコード屋

職場からの帰り道、いつも何もないところに中古レコード屋の看板があり、気になったので寄ってみた。
狭い急な階段を登ると、「靴をお脱ぎください」と書かれた張り紙があり、靴を脱いで、置いてあったサンダルを履いた。

ドアが閉まっていたので営業中か不安になり、ノックし、入っていいか(中にいるであろう人に)尋ねた。すると、男性の声が「ちょっと待ってください」と答えた。中からがたことと何かを急いで整理するような音、身体を家具にぶつけて痛がる音が聞こえた。「どうぞ」という声を合図に僕はしずしずと部屋に入った。
中には明らかに性行為を終えたばかりの若い男女がいた。先程の声の持ち主が「なにかお探しですか?」と僕に尋ねた。僕はいや、偶然見かけてどんなものがあるか物色しに来たと答えた。それから我々はありがちな会話を続けた。どこに住んでいるか、この店はどんなところか、どんな音楽を聞くか等。その間、僕は平然を必死に取り繕う男性の顔と目を向けるとそむける女性の仕草、及びこの部屋に充満する性の香りに勃起した。男性の話にうなずくたびに勃起を隠そうと腰を曲げなければならないため、まるで鳩のようなうなずきをせざるを得なかった。危うく口からよだれがたれそうになったところで、男性が名前を名乗り、握手を求めてきた。僕はいやらしく見えない笑顔でその握手に応じた。男性の手は柔らかく、乾いていて、僕の手とは対象的だった。握手を離したときに白い粘液が手から伸びた気がした。
その店を後にした後、本当にあの男女は僕が入る直前までセックスをしていたのか考えた。