月刊ニヒリスト

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「スーパー・サイズ・ミー2」を見た感想

スーパー・サイズ・ミー」で有名なモーガン・スパーロックの「スーパー・サイズ・ミー2」をさっき見た。前作では、当時から健康に悪いと言われていたマクドナルドのハンバーガーを一ヶ月間食べ続けると人体にどんな影響があるかを検証していたが、2では自らがファーストフード店(フレッシュなチキンバーガー店)を経営することで、どんな事実を知れるかというのを検証している。

 

まず、スパーロックは割と広い飼育場を借り、鶏を飼い始める。先に鶏を育て始めるのは、順番として正しいのかよく分からない。だって店舗やメニューや人員確保の準備に一年くらい掛かりそうだから、先に鶏の飼育を始めてしまうと、育ちすぎてしまうからだ。まあ、でも映画が時系列順に進んでいるとは言っていないので、整合性は取れていることにする。

 

鶏の飼育の過程で、スパーロックは養鶏業界の様々な裏の事実を知る。アメリカの鶏の99.7%?が大企業4社に独占されていること。その4社は全国の養鶏家を競わせ、養鶏家をランク付けする、「トーナメント方式」を採用していること。そして、一番低いランクの養鶏家は生活が成り立たないこと。大企業が恣意的に「トーナメント方式」を運用していること、が複数人の養鶏家のインタビューを通じて明かされる。

 

「大企業は独占している鶏を養鶏家に送り、養鶏家はそれを育て、精肉業者に納品する」

というのが映画を見て理解した鶏肉生産の流れなのだが、先述した大企業はトーナメントで優勝した養鶏家に、わざと質の悪い鶏を与えることで、作中では最下位までランクを下げさせている。また、企業はわざと養鶏家に高い機材を買わせることで、借金まみれにさせる。これらはすべて養鶏家を支配するために行っていると、元大企業にいた要人の告発により明かされる。

その他、「放し飼い」の条件がわずか数十センチ、鶏小屋の外に囲いを作っただけで満たされるなど、鶏肉業界の闇を暴いていったあとで、スパーロックは店舗の内装の参考のために、様々なファーストフード店を訪れる。これは確か前作でもあったが、店内の壁や、トレーの上に乗った広告紙や、レジの上のメニュー覧等に踊る、様々な欺瞞の言葉をマーケティングの専門家達と共に紹介していく。普通のスタッフが作っただけなのに「職人」と書いていたり、「厨房で割った、割りたての卵!!」と何でもないことをよく見せたり、挙句の果てには意味すらない、「Quality!!、Service!!」などの言葉の数々(←むしろこっちのほうが潔い気がしてくる)。内壁は自然をイメージさせる植物の絵柄を多用し、包装紙も発泡スチロールからダンボールっぽい色合いの紙に変更し、巧みに「自然」を演出している。客はそのイメージだけで健康に良いものを食べたと錯覚してくれる(?)。

 

スパーロックはメニュー開発にも抜け目がない。メニュー開発の専門家に依頼し、より健康的で、オーガニックなジャンクフードの開発を目指す。 

まず、「放し飼い」で飼育された鶏をどう調理するかを検討する。グリルが一番、油が落ちるからヘルシーで健康的なのだが、街角で沢山の人達にインタビューした結果、グリルは美味しくなく、人気がないため、却下される。やはりフライがみんな好きなのだ。したがって、メニュー開発の専門家は、フライしたチキンに焼き目の着色料をつけ、それをソースと野菜と一緒にバンズで挟んだメニューを提案する。味は好評で、「これは行けるんじゃないか!」と皆で盛り上がる。

「ところで、このメニューはどれくらい健康的なのかな?」と、スパーロックがふとした疑問を口に出す。専門家は答えに窮し、あたりは爆笑に包まれる。

 

オープン当日。スタッフも雇用し、店の前には長蛇の列が並ぶ。スパーロックは客を招き入れ、自慢の「グリルド・スパイシーチキン・サンドイッチ」を提供する。客は美味しいと言ってそれを頬張り、パンフレットや店内の壁に書かれたメッセージを読む。そこには、これまでハンバーガー店を作るまでの過程で出会った、養鶏家の苦悩や食品会社の欺瞞が綴られている。レジの前には「放し飼いスペース」が設けられ、こんな狭い場所で「放し飼い」が行われていたことに客は驚く。そして客の一人がこうつぶやく。「でも、こんな真実を暴いちゃったら誰も外食しなくなるんじゃないの?」

スパーロックはその疑問に困ったような表情を浮かべ、何も返答できず、映画は幕を閉じる(ほんとはその後のクレジットで養鶏家の後日談とかあった)。

 

 

 

最後のお客さんのつぶやきは「お前はファーストフード店を本気でやる気ないよね?」って言っていると思ったのだが、確かに上に書いたような改善点?をすべて全うしようとしたら、ファーストフード店なんてまともに経営できないんだろうと思った。焼き目の着色料も禁止、遺伝子組み換えも鶏の虐待(成長速度が早すぎて、心臓発作や骨が内蔵を突き破って死ぬことがある)だから禁止、放し飼いも、もっと広いスペースで行う(室内用の遺伝子組み換えの鶏は、太陽光を浴びすぎると死ぬ)、これらをまともにやろうとすると、鶏肉の原価が高くなって、ハンバーガーが高くなりすぎて(なおかつグリルで鶏肉がパサパサになって)、誰も食べに来ないよねって話。ファーストフード店自体が、上で書いたような鶏の犠牲の上で成り立っているかもしれない、ということで今日のところは終わりにします。